C++11 範囲に基づく for 文

多くのスクリプト言語では for in の形式でコンテナーの要素にアクセスできます。 Boost や Qt などでは C++ でもなんとかそれを実現させようとマクロを駆使して for_each として定義されていました。
しかし、とうとう C++11 で範囲 for は言語機能として正式に追加されました。
今回はそんな 範囲 for について紹介します。

範囲 for とは

範囲 for というのは C++11 で The range-based for statement(範囲に基づく for 文) として規定されたもので、 配列、リストといったコンテナーの各要素に順にアクセスする for です。


プログラミング中では、配列などのコンテナーに対してループを回して要素にアクセスする というのはよく行う処理です。
その際、 今まではループカウンターを回したり、イテレーターを使っていたと思います。 範囲 for を使えば次のように書けます。
  vector<int> ary = { 3,2,9,6 };

  for (auto elem : ary) {
    cout << elem << endl;
  }  
ループカウンターやイテレーターを書く必要がなく、簡単に書けるようになります。 すっきりしたので、 "コンテナーの要素にアクセスしている" というコードの意図が分かり易くなるという利点もあります。
また、添え字アクセスと違い、イテレーターのようにランダムアクセス以外にも使える汎用性があります。

なお、この考えを一歩進めると関数型のデータ処理となり、 for の逐次処理以外のいろんな処理ができるようになります。

範囲 for の対象

範囲 for に使えるコンテナーは次の 3 つです。
  • STL のコンテナーなど begin(), end() メソッドを持つクラス
  • 配列
  • 初期化リスト
前章のコンテナー以外もサンプルをあげておきます。

配列:
  int cary[] = { 3,2,9,6 };
  
  for (auto elem : cary) {
    cout << elem << endl;
  }
初期化リスト:
  for (auto elem : { 3,2,9,6 }) {
    cout << elem << endl;
  }

要素の型

範囲 for の要素(elem)の定義にはコンテナーの要素の型を記述します。 これには C++11 に型変換として追加された auto が使えます。

その際、関数の引数のようにコンテナーに変更を加えるかどうかによって、 参照(auto&)か const 参照(const auto &)になります。

変更を加える:
  vector<string> strs = { "foo", "bar", "baz" };
  
  for (auto &elem : strs) {
    elem += "!";
  }
  // { "foo!", "bar!", "baz!" }   
変更を加えない:
  vector<string> strs = { "foo", "bar", "baz" };
  
  for (const auto &elem : strs) {
    cout << elem << endl;
  }  
ただし、最初のサンプルのように要素が int などサイズが小さい場合は、 コピーしても問題がないため、ただの auto にします。
また、参照ではなく、ポインターを指定することも出来ます。

std::map の場合

Boost の for_each の時は std::map だとちょっと面倒でした。 範囲 for の場合は問題なく使えます。
  map<string, int> strmap = {
      { "foo", 3 },
      { "bar", 2 },
      { "baz", 9 }
  };
  for (const auto &elem : strmap) {
    cout << elem.first << " - " << elem.second << endl;
  }
std::map の場合の要素は std::pair です。
範囲 for の対象は begin(), end() を持つ必要がありました。 すなわち、各要素にはイテレーターを使ってアクセスしています。
前章では要素の型をいくつか紹介しましたが、 「イテレーターから導けるものが型として使える」と言えます。

範囲 for は次の記述を簡略化したものと考えると分かりやすいと思います。
  for (auto itr = ary.begin() ; itr != ary.end() ; itr++) {
    auto elem = *itr;
    // 要素に対する処理
  }  

サンプルコード

記事中で紹介したサンプルコードのファイルです。


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