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LLVM Clang の Windows へのインストールと使い方

C, C++ 言語のコンパイラーといえば、 Windows では Visual Studio 、 Unix 系では gcc(g++) というのが多いです。 そんな中、最近 Clang があちこちで使われ始めるようになってきました。
今回はこの Clang の Windows へのインストール方法と使い方について説明します。

Clang とは

ClangLLVM で作られた C, C++, Objective-C, Objective-C++ のコンパイラーです。 LLVM(Clang) の開発には Apple や Google などの企業も参加、資金提供しています。
Clang はgcc の代替を狙っており、 Apple の後押しが大きく、 Mac ではすでに主要なコンパイラーとなっているらしいです。さらに Mac だけでなく、Unix や Windows などクロスプラットホームで使われるようになってきました。

因みに Clang の発音は「クラン」が近いみたいです。 最後の g は HongKong(香港)や Erlang(アーラン)のように日本人にはほとんど聞き取れない音です。

Clang を使うメリット

Clang のメリットとしてよく言われるのが、エラーメッセージが分かりやすいという点です。
C++ では STL などのテンプレートを使った際のコンパイルエラーのメッセージがわかりづらく、 メッセージを見ても、どこが悪いのか、どう直せばいいのかわからないといったことが発生します。 それが解消されるということです。

ただ、個人的には Visual Studio のエラーメッセージと違い、英語になってしまうので、 それはそれでつらいかなとは思います。

Clang が広まる意義

前節のメリットを聞いても、そこまで「よし、 Clang に変えよう」と思う人は少ないかもしれません。 しかし、 Clang が広く使われるようになることの意義は単に C++ のコンパイラーの選択肢が増えるということに留まりません。

それは LLVM がコンパイラー基盤といって、これが実はかなり有益な仕組みであるためです。 Clang は正確にいうと LLVM のフロントエンドプログラムにあたります。 LLVM については上記の記事に説明を書いているので、 ここでは簡単に説明します。
LLVM では仮想マシン(VM)のようにソースの解析後、一旦中間コードにします。 それを LLVM が提供する機能を使って、 最適化実行ファイルの生成 を行います。

フロントエンドは最初のソースの解析から中間コードへの変換を主に担当し、 その C++ 用のものが Clang です。
vm_llvm.png



Clang がエラーメッセージがいくら分かりやすくなっているからといっても、 やはり gcc の最適化の能力と広く移植されている点はすごいものです。 gcc は多くの人が長い時間を書けて作っているのですから、それも当然です。

Clang も広く使われるようになり、開発が進んで、 gcc と同等の最適化や移植性をもつことを想像してみてください。
Clang がその能力を持つということは LLVM で提供している最適化や移植性が同等になることを意味します。 新しい言語を作ろうと思った場合、一人で gcc ばりの最適化や移植は不可能です。 しかし、 LLVM では中間コードを生成するところまで作れば、 その能力を手にしたコンパイラーを作ることができます。

Microsoft や Google といった大企業や GNU のような大きなコミュニティーでなくてもいいわけですから、 一人のセンスのいいプログラマーがいれば、優れたコンパイラーをもった言語ができます。 素晴らしい言語が次々生まれる予感がして、 言語好きとしてはワクワクしてしまいます。

C++11, C++14 対応

そうしたわけで、 Clang はぜひ広まって欲しいと思っています。 ただ、「では自分は」というと、いろんなシガラミもあり、そうそうコンパイラーを変更することはできません。
しかし、 Clang はもう一つ大きな利点があります。 それは Clang がいち早く C++11, C++14 に対応した点です。 C++14 を一足先に試してみたいということで Clang を使ってみました。

C++ の言語仕様は長らくあまり変わっていなかったのですが、 C++11 で大きな機能追加があり、 C++14 でその補足的な機能追加がありました。
C++14 の 14 は 2014 年のことで、つい最近です。 C++11 の変更が大きく、他のコンパイラーがその対応もおぼつかない中、 C++14 の対応は異常だと感じるほどでした。

ただ、この利点はしばらくしたら、なくなってしまう利点です。 実際、 GCC も最近 5.1 で C++11 に完全対応し、実験的位置づけですが C++14 にも対応しました。
とはいえ C++17 など C++ の今後もっとよくなっていく気配を感じると Clang の対応の早さは期待が持てます。

因みに Visual Studio に関しては C++11 もまだまだという感じです。

gcc 互換か VS 互換か

Clang は gcc 互換を目標に開発されていますが、 同様に Visual Studio (Visual C++)互換も開発されています。

VS での C++ のコンパイルには内部で cl.exe を使用しています。 これと互換の clang-cl があります。
ただし、 clang-cl では C++11/14 への対応も cl に合わせているため、 C++14 対応の恩恵は得られません。


この記事では gcc 互換、 VS 互換の両方を解説していきます。

インストール

事前準備

gcc 互換 として使用する場合は MinGW (Windows 用 gcc) のインストールが必要です。
Clang は gcc を置き換えて使うようになっています。 Clang をインストールしてもコンパイラーと Clang 専用のヘッダー、ライブラリーがインストールされるだけで、 iostream のヘッダーすらインストールされません。 それらの基本ライブラリーは gcc のものを使うため、 MinGW のインストールが必要となります。

MinGW のインストールに関しては以前の記事を参考にして下さい。
なお、 インストール先のフォルダーはデフォルト(C:\MinGW)から変更してはダメです。 変更するとclang はヘッダー等を見つけられなくなります。 VS 互換 の場合には Visual Studio があらかじめインストールされている必要があります。

ダウンロード

LLVM のダウンロードサイトから Windows 用のバイナリーをダウンロードします。 lang_clang_dl.png

ダウンロードされるファイルは LLVM-X.X.0-win32.exe というインストーラーです。 clang ではなく LLVM という名前ですが、ちゃんと Clang がインストールされます。

インストール

インストーラーを実行するとウィザードが表示され、それに従えばインストールは完了します。

この際、実行ファイルの場所を環境変数 PATH に追加するかどうかの選択があるので、 ここは追加するようにしておきましょう。

lang_clang_inst.png

あと変えるとしたら、インストール先のパスぐらいではないでしょうか。

lang_clang_inst_path.png




なお、 VS をインストールしていないか、バージョンが古い(.NET 4.0 以上に対応していない)場合、 コンソールのエラーが出て止まります。 これは [Enter] を押せば、閉じて継続します。

lang_clang_vs.png

gcc 互換として利用する場合は関係ないので、特に気にする必要はありません。
後から VS 互換を使いたいといった場合は VS のインストール後、 (インストール先フォルダー)\tools\msbuild\instal.bat を実行して下さい。失敗したインストール処理を行います。

使い方

gcc 互換

gcc 互換の場合は、 gcc をそのまま置き換えれるようになっているので、 使い方は gcc と同じです。
各実行ファイルの対応は次の様になっています。

機能 GCC Clang
C コンパイラー gcc clang
C++ コンパイラー g++ clang++


例えば、 C++14 規格でコンパイルする場合は次のようになります。

hello.cpp :
#include <iostream>

int main()
{
    std::cout << "Hello world!" << std::endl;
    return 0;
}
~/lang/cpp $ clang++ -std=c++1y hello.cpp 
~/lang/cpp $ ./a.exe 
Hello world!
gcc の基本的な使い方についても MinGW の記事をご覧ください。 なお、 C++14 規格でコンパイルするためのオプションは正しくは -std=c++14 です。 しかし、このオプションをつけると clang++ から呼び出される g++ のエラーが発生します。
最初に GCC は C++14 に対応したと書きましたが、 MinGW の GCC のバージョンは少し遅れていて、 ちゃんと C++14 を試すためにはもう少し待つ必要があります。


ここでは基本的なコンパイルのやり方しか示しませんが、本格的なアプリを作る場合には Autogen のようなビルドツールを使うことになります。
Unix 系のビルドツールの場合は C コンパイラーは CC 、 C++ コンパイラーは CXX の変数で定義されていることが多いです。 その場合は CC=clang 、 CXX=clang++ という様に変更すれば、 Clang が使用されます。

VS 互換

VS 互換の場合は C++ のプロジェクトファイル(vcproj) のプロパティー画面を表示し、 [プラットホームツールセット] の項目で [LLVM-vs20XX] を選択します。

lang_clang_vs.png

この選択ができるようになっているのは、インストール時にツールセット用のファイルを作成したためです。 先ほど書いたコンソールのエラーは、この作成に失敗すると出ます。
ツールセットを設定し、プロジェクトをビルドすれば、コンパイルに clang-cl が使われるようになります。
ただし、 clang-cl の場合、 iostream のヘッダーをインクルードするとコンパイルエラーとなり、 Hello world すら作れません。 printf を使えば作れるのですが、 VS 互換に関してはまだまだといった感じです。


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仕事は主に C++ ですが、軽い言語マニアなので、色々使っています。

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