フリーの日本語入力ソフト (IME) 機能比較

IME を選んで使ってますか?
今回は Windows 用のフリーな日本語入力ソフト(IME)の機能比較です。
ただし、機能は変換精度や速度といったものではなく、 私が便利だなと思うプラスアルファ的な機能についてです。

対象 ソフト

対象としたソフトウェアは OS に標準でついている Microsoft IME (MS-IME)、 Microsoft Office IME 2010 (Office IME) と無料で公開されている 2 つの IME です。
追記 2013-01-25
Office IME 2010 の比較を追加しました。
Google IME Icon Google IME
Google が作成した IME です。
Google 検索の"もしかして"機能の担当者と PRIME の作者が中心になって開発したそうです。
Baidu IME Icon Baidu IME
Baidu IME は中国発の検索サイト Baidu(百度) が出している IME です 。
フリーソフトをインストールする時、よく一緒にインストールしないか 訊いてくるので、目にしたことがある人は多いのではないかと思います。
Office IME Icon Office IME 2010
Office IME 2010 では、 Google の IME に対抗してか、かなり機能強化されました。
Office 2010 製品についてきますが、過去の Office 製品のライセンスがあれば、 リンク先の Microsoft のサイトから無料でダウンロードすることができます。
(これをフリーと呼ぶのかというと微妙ですが)

ただ、これは Windows 8 では使えません。 Windows 8 の MS-IME の方がより新しいからということらしいのですが、 こちらは Windows 8 を持っていないので、比較していません。

なお、フリーの IME としては Social IME もあるのですが、 Windows 7 に未対応のようなので、対象外としました。

機能比較

私が便利だと思う機能とその対応の一覧です。 赤字の機能は特に欲しいなというものです。
機能 MS-IME Office IME Google Baidu
Emacs での入力
予測変換(サジェスト)
同音異義語の説明
専門辞書の追加
自動更新
カタカナ英語変換

変換精度や速度といったものは、 大事なところだとは思いますが、比較はなかなか難しく、やっていません。 使ってみた感覚ではどれもそれほどかわらない気がします。

ただ、"わたしはなまえはなかのです(私の名前は中野です)" を変換したところ、 MS-IME 、 Google は一発で変換できますが、 Baidu は 2 番目の変換候補でちょっと変換精度が落ちるかもしれません。

MS-IME と Office IME 間でいうと Microsoft いわく、かなりのパフォーマンス改善が行われています。
変換速度に関しては 2 倍らしいです。

Emacs での入力

もともと他の IME を試してみたきっかけは Windows 7 では MS-IME と Emacs 24 の組み合わせで、 うまく動かなかったためです。 Goole , Baidu IME では問題なく動きます。

ただし、 Windows 7 でも Office 2010 にすると入力できるようになりました。

予測変換(サジェスト)

予測変換は携帯やスマホでは大抵ついている機能で、 書いている途中で、予測して候補を出してくれます。
入力しづらい携帯と違って、それほど必要性は感じないのですが、 予測がうまくいったときには入力が速くなります。

MS-IME にも予測変換機能はついているのですが、 他のと違い、過去に入力したものの中からしか予測しません。 それだとあまり役に立たないので、 △ にしています。
Office IME ではずいぶん予測がよくなったのですが、 予測対象はやはり過去に入力したものに限るようです。

Google と Baidu では Google の方が候補数が多く、 表示する候補数の指定もできるので、 若干上かなと思います。
Suggest Google IME Suggest Baidu IME
Google IME Baidu IME

同音異義語の説明

例えば、 "あげる" を変換するときに、 どの漢字にすればいいのだろうと迷う時があります。
こんな時に説明を表示を表示してくれる機能です。 これがあるとかなり助かります。

MS-IME は簡単な説明だけですが、 Google は用例も表示してよりわかりやすいです。
Homonym MS-IME Homonym Google IME
MS-IME Google IME

専門辞書の追加

MS-IME で最初から幾つかオプション辞書が入っています。
Google IME にもほぼ同様の辞書が入ってますが、 Baidu IME はサイトからダウンロードして追加します。
辞書 MS-IME Office IME Google Baidu
郵便番号
単漢字
顔文字
人名地名
記号
カタカナ語英語(後述)
これらは郵便番号辞書のように特殊変換的なものや 人名辞書のように変換精度を上げるものです。

人それぞれで専門分野があるので、 その分野の辞書が入っていると、変換精度が上がります。 私の場合は科学技術用語や IT 用語の辞書が欲しい辞書です。
こういった専門辞書を追加できる機能の比較です。

◎ : Baidu IME は Baidu のサイトから公開されています。 ネットで使うような辞書が中心ですが、いろいろな辞書があり、私が欲しかった IT 用語辞書もあります。
○ : MS-IME も辞書を追加することができます。 広く使われているだけあって、いろんな辞書が公開されています。
ただ、 Baidu と違い、個人が公開しているものなので、 欲しい辞書があまりなかったり、有料だったりします。 ◎ : Office IME では オープン拡張辞書 としてサイトからの追加の体制が整ってきています。
数はまだまだこれからという感じですが、 IT 用語辞書に関しては Microsoft が作成しています。
△ : Google IME には残念ながら、辞書の追加機能はありません。
ユーザー辞書として、追加することはできなくはないですが、 使いにくいです。

自動更新

言葉は日々増えていきます。
特に有名人の名前などは頻繁に増えてくるので、 辞書や IME の自動更新があったほうがいいでしょう。

Google IME では自動更新はできるようです。 Baidu は辞書の更新はよくわかりませんが、 クラウド上のサーバーと連携する クラウド入力 という機能があります。

Office IME では Windows Update を利用して辞書の更新がされるようになりました。
また、最新語辞書というのも用意されています。

追記 2013-12-19
辞書、 IME の自動更新はいいと思うのですが、 ユーザー辞書の同期やクラウド変換にはセキュリティー上の注意が必要です。

カタカナ英語変換

カタカナ英語を入力すると英語のアルファベットに変換してくれる機能です。 例えば こまんど と入力すると Command と変換してくれます。

私の場合は英語のスペルがうろ覚えのものが多く、 英語の文章を書いている時やコーディング中に役に立っています。
とくにコードを書くときには CommandClass のように単語を繋げて書くことが多く、 スペルチェックを使えないため、非常に助かります。

MS-IME と Google IME は変換の候補として、 小文字、 大文字、 先頭だけ大文字 の 3 つが出てきます。 Baidu IME だけ、 小文字しか選べません。
コーディングでは、 先頭大文字やすべて大文字の単語も使うので、 小文字だけだと使いづらく、 △としています。

また、 MS-IME では変換候補が複数ある場合には単語の説明も表示してくれます。

Katakana MS-IME Katakana Google IME Katakana Baidu IME
MS-IME Google IME Baidu IME


Office IME ではなぜか単語の説明がなくなり、この点に関しては機能ダウンしています。

追加した IT 用語辞書でも、 説明の部分をマウスでクリックすることにより英語への変換ができるようになっています。
ただ、英語にできるのは嬉しいのですが、キー入力中にマウスを触らせるというのは ありえない操作性かなと思います。

公開されている Google のカタカナ英語辞書

Google IME 用のカタカナ英語辞書を作成しているプロジェクトがあります。 Google IME も標準でカタカナ英語辞書がつくのですが、 かなり多くの単語が登録されているので、 カタカナ英語変換をよく使う私としてはかなり嬉しい辞書です。

ただし、 2 点ほど問題があります。
ユーザー辞書としてしか追加できない
Google IME では辞書の追加機能が無いため、ユーザー辞書として追加します。
ユーザー辞書ですので、変換候補としてカタカナよりも先に英単語がきてしまいます。 サイトのページにも書いてありますが、 IME に覚えさせるまで、普通にカタカナを書くのが、結構めんどうになります。
また、インストールも少し大変です。
英単語に説明が入っている
辞書の登録がうまくいっていないだけかもしれませんが、 変換後の英単語に () 書きで説明が入っています。 このため、変換候補に著しく長い単語が入ってきて、かなり見づらいです。
私の場合は、一回 () の説明を Emacs の置換機能で全部とってから、追加しなおしました。

その他の特徴機能

Google IME, Baidu IME で特有の機能もあげてみます。

Google IME

もしかして機能
Google 検索には、スペルミスをした場合などで、 正しそうな単語を推測してくれる機能があります。 この IME 版です。
サイトのものはかなり便利なのですが、日本語入力としてはそれほどでもないです。 ただ、しゅみれーしょん のようにちょっと紛らわしものを入力した時、 一般的な候補を上げてくれるため、ミスが減ります。
Google もしかして機能
日付変換
きょう と入力すると 2012/10/29 といった日付に変換できる機能です。
メールを書くときなど、つい明日、明後日など書きたくなります。 しかし、メールのような相手がいつ読むかわからないものは、日付もつけておいた方が親切です。 そういった時、この機能があるとすぐに変換できます。
Google Data

Baidu IME

和英辞書
入力中の文字で和英辞書を引き、その説明を表示する機能です。
非常に惜しい機能です。 引いた英語を変換結果として使えるのであれば、使い手があるのですが、 表示するだけなので、使い勝手の悪いただの辞書にしかなっていません。
Japanese English Dictionary
スクリーンキャプチャー
現在の表示画面をキャプチャーして、 クリップボードまたは画像ファイルに保存する機能です。
あると便利ですが、そういうフリーソフトもいっぱい出てますし、 Baidu IME 使わなくても同じことはできます。

まとめ

3 つの中では Baidu IME が格段に落ちる感じです。
Baidu は同音異義語の説明がないのと、カタカナ英語変換が不十分なのが、 致命的です。
ただ、ネット系の辞書には強いので、 ネット上でよく文章を書く人にはいいかも知れません。

Emacs を使うのであれば、 もう Google IME で決まりです。
ただ、使わないにしても、 MS-IME と Google IME を比べると Google の方がやや便利かなといった感じです。



というように以前、結論を書いていたのですが、 Office IME 2010 の登場で若干抜き返した気がします。
Office を購入しているのであれば、 Office IME がいいのではないかなと思います。

結局、 デフォルトのままで、別の IME をインストールしなくてもいい という状況なってきました。
しかし、今までほぼ独占だったソフトに競合ができ、 お互いにいいものになっていくのは非常に喜ばしいことだと思います。 次は Google IME の巻き返しを期待したいところです。

追記 2013-12-26
紹介した Baidu ですが、 IME で入力したデータを勝手に送信するひどいアプリでした。 主に問題なのは、次の 2 点です。
  • 入力データと一緒にパソコンの ID を送信する
  • 送らないように設定しているのに、実は送っている
バグだったとか日本国内でしか使っていないなど説明されていますが、本当のところは確認しようがありません。 不用意に紹介して申し訳ありませんでした。ここでは今後 Baidu は使用しないことをお勧めします。
すでにインストールされた方は削除してください。


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続々出てきた JavaScript 系新言語。どれを使う?

最近、コードを JavaScript に変換して使用する形式の言語が続々と出てきました。 それらのうち、どれを使おうか迷っていませんか ?
今回は JavaScript 系新言語の選択について私なりの考えを書いてみました。

ただ、どれもまだ試しにちょっと使ってみただけなので、 もっとよく使ってみたら、また意見が変わるかも知れません。

検討した新言語の Windows 環境におけるインストール方法(コンパイラーの使い方)および Emacs モードのインストール方法については、 以前の記事を御覧ください。

言語 インストール Emacs mode
CoffeeScript link link
Dart link link
TypeScript link link
Haxe link link
JSX link link

先に選択方針を図にまとめたものをあげておきます。
js_select_new_javascript2.png

JavaScript 系新言語のどれかは使うべき ?

最初にそもそも何か新しい言語を使う必要があるのか? というところから考えてみましょう。

JavaScript に変換する言語あるいは取って代わろうとする言語 がいろいろできてきている状況を考えると、 今のままの JavaScript には問題がある と多くの人が思っていることは間違いないです。

そのため、今後は JavaScript を直接書くのはやめて、 どれかの言語は使うべきだと思います。

JavaScript にもいいところはある、 新しい言語を覚えるのは大変という人も多いでしょう。
しかし、理由は後で説明しますが、そういう人でも TypeScript は使うべきです。

対象言語

ここに挙げたもの以外にもありますが、私が有名だなと思うものと対象にしました。

CoffeeScript

CoffeeScript は JavaScript に変換して使用する言語としては最初に有名になった言語ではないでしょうか。

JavaScript の抱える問題には大きく 2 つあると思います。
その一つは スクリプトなのに書きづらい 点です。
スクリプト系の言語は書きやすさが売りです。 しかし、 Ruby や Python など他の言語の経験者が使うと、 JavaScript ってこんなこともできないの と思う点が多々あります。
CoffeeScript はそんな問題点を解決する言語で、 スクリプトとしての書きやすさの向上を目的としています。

もう一つの問題は大規模開発に向いていない点です。
JavaScript はちょっとした処理の実行を目的に作られました。 そのため、 近年 Web アプリが大規模化してきて、役不足になってきました。
CoffeeScript の書きやすさの改良に対して、 以降の言語は大規模開発向けの改良に重きが置かれています。

Dart

Dart は Google が開発した言語です。 Dart の特徴はなんといっても JavaScript との置き換え を目的にしている点です。
他の言語は JavaScript に一旦変更して使うことになります。 Dart も JavaScript への変換機能は用意されていますが、 あくまで過渡的なもので、 最終的にはブラウザーで直接読み取って実行することが目的です。

TypeScript

TypeScript は Micorosoft が開発した言語で、 その名のとおり、 型(Type)指定ができる JavaScript です。特徴は ECMAScript 6 のスーパーセットであるところでしょう。

JavaScript はもともと Firefox の前身である Netscape 用として作成されましたが、 いまでは ECMAScript として標準化されています。
ECMAScript は型指定などの大規模開発向けの機能を盛り込んだ次期バージョンを策定中です。 TypeScript はこれらの機能を先取りした次世代の JavaScript といえます。

ECMAScript 6 もだんだんとでき始めてます。 Dart とは違ったアプローチで TypeScript は今後の JavaScript となっていくでしょう。

Haxe

Haxe の特徴は JavaScript だけでなく、様々な言語への変換ができることです。

変換可能な言語としては次のようなものがあります。
  • JavaScript
  • Flash
  • PHP
  • C++

JSX

JSX はオンラインゲームで有名な DeNA が開発した 言語です。
変換後の JavaScript がなるべく速く動作するように最適化 されている点が特徴です。

まだ、ちゃんと動作しませんが、 JavaScript だけでなく、 C++ への変換も考えられているふしがあります。

機能比較

代表的な機能に対して比較をしてみました。
言語 静的クラス 型指定 モジュール JavaScript の利用 ソースマップ
CoffeeScript
Dart
TypeScript
Haxe
JSX

静的クラス

JavaScript のわかりにくい点といえば、 プロトタイプベースのオブジェクト指向 だと思います。
他のオブジェクト指向言語の経験があると、馴染めないと感じてしまいがちです。

ECMAScript 6 には静的クラスが入っています。 プロトタイプベースにも良いところはあるといった記事も見かけますが、 ECMAScript の策定者でさえ静的クラスがあった方がわかりやすいと認めていることは間違いないでしょう。

この静的クラスが使える点は書きやすさの特長として言語の説明でよく挙げられます。 対象とした全ての言語で使えます。

型指定

型指定はメソッドの引数などで型を指定できるかどうかです。
JavaScript では不適切な型の変数を渡しても、 型チェックが無いため、実行時に初めてエラーが分かります。
この機能があれば、コンパイル時にエラーのチェックができます。
コードの安全性を向上する大規模開発向けの機能です。

Ruby や Python にもないためか、残念ながら CoffeeScript では対応していません。

追記
JavaScript に変換するので、静的型付けにしても実行速度の向上はそれほど望めません。
関数の型チェックは欲しいですが、 言語として静的型付けにするのは余分な型宣言の手間を増やします。 JavaScript 変換に限れば、静的型付けにするのはやりすぎかなと思い、 Haxe, JSX を ○、 Dart, TypeScript を ◎ にしました。
追記 2013-09-27
型指定に関しての補足記事を書きました。

モジュール, JavaScript 利用

JavaScript の大きな欠点として、 他のスクリプト言語での require、 C, C++ での include に相当するような機能が無いことが挙げられます。 この機能を実現するものは、 モジュールライブラリーと呼ばれています。 これも大規模開発向けの機能といえるかも知れません。
この機能も候補の言語すべてで使えます。


ただ、 JavaScript でも全くできないというわけではなく、 <script> タグで複数ファイルをロードすることによって似たようなことはできます。 JQuery のプラグインなどはこれで実現しています。

JavaScript 利用 は JQuery のような JavaScript ですでに書かれたコードを使えるかどうかという意味です。

JavaScript のコードも候補の言語すべてで使うことはできます。
しかし、 言語の入れ替えを狙っている Dart や他の言語への変換も考えている Haxe や JSX ではちょっと利用に手間を必要とします。
CoffeeScript は TypeScript を除けば、 JavaScript の一番薄いラッパーといえるので、 使えなくはないといった感じです。 また、生成後の JavaScript コードも読みやすくなっています。他の言語の生成コードは読むことが想定されておらず、まず読めません。

TypeScript は JavaScript の次期バージョンですから、 すんなりと JavaScript のコードを利用することができます。 過去の資産がそのまま使える方がいいというのが、 Microsoft の主張でもあります。

ソースマップ

ソースマップ は Chrome や Firefox でのデバッグ時に使用するものです。 これを使うと JavaScript のソースファイル上のエラー発生箇所と一緒に 変換前の言語でのソース上の対応箇所も表示することができます。
すなわち、デバッグしやすいということです。

CoffeeScript だけが現時点(2012-11-08)で対応していませんが、 そのうち対応するとは思います。
追記 2013-01-27
非標準のコンパイラーですが、 CoffeeScriptRedux というコンパイラーを使うと CoffeeScript でもソースマップを生成できるようです。
追記 2013-03-11
CoffeeScript でも Ver. 1.6.1 から対応しました。

Dart 時代は来る ?

言語を選択する上で、 本当に Dart への移行があるのか というのは大事なポイントでしょう。 そこでこの点について私の予想を書いてみます。

MS の不支持

Dart が広がる上で一番の問題点は Microsoft が反対していることです。 つまり、 IE では対応しないということです。 JavaScript の問題点は作りなおさないと直らないというのが Google の考え方です。 それに対し、既存の資源を大事にし、 JavaScript の欠点は JavaScript を改良することによって解決しようというのが Microsoft の主張です。
TypeScript は ECMAScript 6 が実現するまでの間に Dart に席巻されないための対応策といったところでしょう。

ダメなものは新しいものでどんどん置き換えていく新興企業の Google と古いものを大事にさせたい大御所の Micorosoft との対決といった感があります。


IE で使えないのでは、 Dart の使用は考えてしまうところですが、 Dart に対応していないブラウザーでも使えないわけではありません。
対応していない場合、 Google のサイトにある JavaScript を呼び出して、 Dart のコードを JavaScript に変換して動作させることができます。
Dart 対応のブラウザーはそのまま使え、Dart 未対応では動くけど、遅くなる というのを Google では薦めているようです。

ちなみに既存のものを大事にしようと言っている Micorosoft ですが、 以前には VBScript を広めようとしました。
これは Office 製品の VBA や Visual Basic のユーザーが作りやすいように といった意図だったと思います。 しかし、 Netscape(当時の IE の対抗はこれぐらい)が苦労して MS 帝国を強固にするための手伝いをするわけもなく、 結局広がりませんでした。

他のブラウザーの対応

IE 以外のブラウザーの対応はというと現時点では Dart に対応することを明言しているのは、 Chrome だけです。
そこで将来的な対応も考えてみます。 このブラウザーの対応を考える上では、 レンダリングエンジンが重要だと思います。 レンダリングエンジンには JavaScript エンジンも含んでいることが多いです。 Chrome ではこれを変えて使っているようですが、 WebKit での Dart 対応ができれば、対応ブラウザーは一気に増えます。 Safari, Opera に加え、 iOS, Android のほとんどのブラウザーが WebKit を使っています。

Firefox も対応すると思います。 Google は Mozilla の筆頭スポンサーですし、 Mozilla には新しいものを積極的に取り入れる気質がある感じがします。

他のモダンブラウザーでは高速に動くのに、 IE だけは遅くなるというサイトが増えれば、 さすがに IE も対応するのではないでしょうか。

追記 2013-04-05
Chrome は WebKit から分岐した Blink にして、独自路線で行くようです。
Opera も Blink にするようですが、 Safari や iOS の標準エンジンは WebKit のままでしょうし、 Android の標準が Blink になるのかもわかりません。 Android では Samsung と Mozilla が組んで作る Survo が標準になっていく可能性もあります。
どちらにしろ、これで一気にということはなくなってしまいました。

また、 Google が WebKit の開発に関わらなくなれば、 WebKit での Dart 対応も怪しいなってきます。

また、 Dart がオープンソースなのも広げる要因になると思います。
ソースが公開されていれば、簡単に機能を追加できるということは決してありませんが、 それでも、 0 から作るよりかなり楽だと思います。

選択方針

言語ごとの選択方針です。

CoffeeScript

CoffeeScript は出てきた当初はすごいと思いました。 しかし、他の言語もいろいろと出てきた後では、 大規模開発向けの機能の弱さなど少し見劣りがする感じです。

ただ、 CoffeeScript は Rails の標準になるらしいですし、 Ruby との共通点も多いので、 Rails を使った Web アプリを開発する場合には あり かなと思います。

Haxe

Haxe を利用する場面としては、 Web でも使いたいし、 ローカルでも動作させたいといったプログラムを作る場合でしょう。

例えば、 TeX の記述を MathML に変換する mathjs という JavaScript ライブラリーがあります。 mathjs が Haxe で書かれているわけではありませんが、 こういったものは、ローカルで使っても有用なのではないかと思います。

JSX

JSX の売りは速さです。 これは今の時点ではかなりメリットですが、 将来的にはどうかなと思っています。

C 言語などでも 2 で割るよりもシフト演算子を使った方が速い といった速く動かすためのコーディングというものがいろいろありました。
しかし、最近ではコンパイラーの高機能化やコンピューターの高性能化により、 あまり聞かなくなりました。

JavaScript の最適化もブラウザーが高性能化していけば、 必要なくなってくる分野だと思います。


JSX が JavaScript よりも優れていると言っている点は faster, safer, easier です。
ここで、 safer が型指定、 easier が 静的クラスを指しています。 faster を重視しなければ、他の 2 つは他の言語にもあり、 特長がなくなってしまいます。

しかし、欠点も見当たりませんし、言語仕様的には悪くありません。 インターフェースも Mix-in もできて、むしろ良い感じです。 日本製ですし、個人的には応援したい気もあります。 C++ への変換ができるようになれば、広がる可能性はあるんじゃないかなと思います。

TypeScript, Dart

大手が開発しているだけあって、 特に理由がなければ、 TypeScript か Dart に落ち着くのでないでしょうか。


JavaScript だって捨てたものではない、 新しい言語を覚えたくないという人でも TypeScript は使うべきと最初に書きました。 これは TypeScript が今後の JavaScript であるからです。
TypeScript は欠点の改良された JavaScript なので、 先取りして使っていった方がいいと思います。
また、 JavaScript の機能追加なので、新しく覚えることは少ないですし、 TypeScript で追加された機能は JavaScript を使っていてもそのうち覚えなくてはならなくなります。

TypeScript には他にも JavaScript のライブラリーがそのまま使えるという利点があり、 他の言語から抜きんでている感があります。


では Dart を使う利点はというと私は速さだと思います。
JSX のところで速さを重視しないと書いたばかりですが、 こちらはコードの書き方といった小手先のものではなく、 もっと本質的なものです。 C++ における テンプレートを使った基本型のソートでは C よりも速くなる といったような言語仕様からくる速度の向上です。
同じものを JavaScript と Dart で書いた場合、 ブラウザーが対応していれば、 Dart の方が速く動くという可能性は高いです。

また、他の言語もソースマップというものはありますが、 Dart は Dart としてデバッグできるので、一番デバッグしやすいでしょう。


昔の JavaScript のコードを使うことを重視するなら TypeScript 、 新しく作る場合には Dart といった選択がいいのではないかと思います。

私の選択

最後に私の選択について書いてみたいと思います。

個人的には Dart が広まって欲しいと思っています。
これは決して Dart が理想的な言語と思っているわけではありませんし、 JavaScript なくなれと思っているわけでもありません。 大事なのは、今まで JavaScript 以外の選択肢がなかったのに対して、 選択肢ができるということです。
私はこの多様性のある状況というのが好きです。 Dart が成功すれば、今後、別な言語も登場してくる可能性が出てきます。 逆に Google ができないようでは、 他のどこにもできないでしょう。


そのため、基本的に Dart 推しです。
しかし、プログラミング言語はツールであり、言語は目的、用途にあわせて使い分けるもの とも私は思っています。
何か理由があればその言語を使うし、なければ Dart を使う というようにしていくつもりです。

追記
比較記事としては書いてませんが、 JavaScript 変換系の言語はまだまだあります。 サイトへのリンクだけの言語も少しずつ調査していきたいなと思ってます。

追記
使っている言語のアンケートがあるといいなというコメントを見かけたので、 追加してみました。(右カラムの下の方にあります)
 
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